解説:午後問題2   暫定解答2
クオリティ・オブ・ライフ(QOL)について誤っているのはどれか。
1
.生活の質と訳される。
2
.生命至上主義から導きだされる。
3
.患者の自己決定権の主張と結びつく。
4
.客観的な評価法がある。

QOL(Quality of Life)という言葉は生命あるいは生活の質と訳されます。
これまでの医療が寿命の延長に関心が注がれてきましたが、長寿社会となり、生命至上主義から生命の質へと関心が向いてきました。
そこに登場した言葉がQOLです。
QOLは精神面と障害面から測定されます。
精神面は「生きがいや幸福感」として表され、評価指標は「主観的幸福感」があげられます。
障害面は「障害調整生存年数」や「健康寿命」があり、こちらは客観的に評価できます。
このような問題は柔整国試では新傾向ではありますが、医師国家試験・歯科医師国家試験・看護師国家試験では毎年のように問われる内容です。
医療の一端をになう柔整師として、「QOL」という言葉を知っていて欲しいという出題委員の思いが込められていると思います。
一見難問ですが、「QOLとは何か」という原則に立ち戻れば、
 2.生命至上主義から導きだされる。
誤りであることが分かります。
スパゲッティ症候群といわれるような、患者にたくさんの管を通して少しでも長く延命をしていた時代から、医療を受ける側と施す側が話し合って治療を決定する時代へと変わりました。
ひとりひとりの患者によって異なるQOLに、意思決定への患者の参加を促すことは医療に携わる全ての人にとってとても大切なことです。
「何を基準としてどの治療法を選択するか」を患者と共に選択していくにあたり、QOLという言葉は大切な鍵となります。
専門学校の生徒でも、合格を手にした後でも、
医療人であることを忘れずに、
「QOLとは何か」
「ノーマライゼーションとは何か」
「患者の意思決定権とは何か」
等について少しでも知識と関心を持ってもらえればと思い綴りました。


解説:午後問題26   暫定解答4
正しい練合せはどれか。
1
.猩紅熱----ハンター(Hunter)舌炎
2
.ジフテリア----コプリック斑
3
.麻疹----咽頭偽膜形成
4
.ビタミンB1欠乏症−---口角びらん

選択枝1・2・3が違うことは、柔整の過去問だけでなく鍼灸の過去問でも、あん摩師・マッサージ師過去問でも同じ選択枝内容で出ています。
さて、問題の4なんですが、口角びらんの原因といえば普通に考えればビタミンB1欠乏症ではなく、ビタミンB2欠乏症の誤植ではないかと思われます。
しかし、実際にはビタミンB群には共同作用があり、「ビタミンB群の欠乏」が口角びらんの原因となっていると記述するエビデンスがあります。
単純な誤植なのか、それともビタミンB群の共同作用が問われているのか議論いたしました。
しかし、Pubmedで調べたところ、ビタミンB2・B6・B12欠乏などが口角びらんに作用する論文はありますが、ビタミンB1に関しては見つかりませんでした。
答えがあるとするならば、また、答えに最も近い答えならば
 4.ビタミンB1欠乏症口角びらん 
となりますが、他の選択枝の難易度から考えて、誤植による不適切問題と考えられます。

 

解説:午後問題37 暫定解答3

っているのはどれか。
1
.末端肥大症では内臓肥大がみられる。
2
.末端肥大症は視床下部腫瘍が原因である。
3
.下垂体性小人病では骨年齢は正常である。
4
.尿崩症では低張尿が認められる。


病態をしっかり理解していないと解けない難問です。
 1.末端肥大症では内臓肥大がみられる。正しい
下垂体からの成長ホルモン(GH)の増加が
骨端線が閉じる前だと巨人症
骨端線が閉じた後だと先端肥大症
ということは、殆どの方が教わってきたことだと思います。
第15回の一般臨床は「病態」まで理解して欲しいというメッセージが汲み取れる問題が出題されてきています。
GHには抗インスリン作用があり、糖尿病にもなります。
他の末端肥大症の症状としては、
眼窩上縁や頬骨が突出し、鞍鼻などの症状も呈します。
軟部組織の増生がみられ、手根管症候群・巨大舌を呈します。
(臨床現場では踵の軟部組織の量を病状の目安に使います)
肝臓・心臓・腎臓・甲状腺などの内臓腫大を伴います。
心臓肥大による心機能低下も起こります(心臓肥大しますが心筋が太っているわけではないので機能は低下します)。
などがあります。
 3.下垂体性低身長症では骨年齢は正常である。 
誤り
下垂体性低身長症(以前は小人症と呼ばれていましたが批判が多く改名されています)では
均整のとれた体形で平均身長より低い(-2SD
骨年齢の遅延
分泌刺激試験の低反応
などの結果により診断します。


解説:午後問題38 暫定解答3または4
クッシング(Cushing)症候群の徴候でないのはどれか。
1
.満月様顔貌
2
.骨粗鬆症
3
.下腿浮腫
4
.高コレステロール血症

クッシング症候群とは「慢性の糖質コルチコイド(コルチゾール)過剰症に起因する疾患の総称」です。
過剰なコルチゾールは糖脂肪化を促し、続発性高コレステロール血症となり、中心性肥満(赤色皮膚線条・満月様顔貌・バッファローハンプ)となります。
コルチゾール過剰によって蛋白異化亢進も起こり、骨萎縮(骨粗鬆症・病的骨折・腎結石)が起こります。
クッシング症候群のうち最も多いのが下垂体腺腫によるもので、下垂体好塩基細胞腺腫が原因のときは「クッシング病」と呼ばれます。
クッシング症候群の一つである「クッシング病」では、まずACTHの分泌過剰が起こり、ACTH=副腎皮質刺激ホルモンの名前のとおり、コルチゾールだけでなくアルドステロンも分泌過剰となります。
アルドステロン分泌過剰から高血圧(収縮期・拡張期ともに上昇)と下腿浮腫(女性の主訴として多い)が起こります。
そのため、全ての選択枝が正解となり、不適切問題と考えられます。
もし答えがあるならば、高コレステロール血症が続発性であるため誤りとするか、下腿浮腫がアルドステロン分泌過剰であるため病態からずれていると考えるかだと思います。
厚労省の発表を待ちたいと思います。